不動産の見学で気を付ける3つのポイント

家探しで避けては通れないのが「現地を見学する」という作業です。一方で、昨今はコロナ禍の影響で、不動産会社も工夫して現地の動画や、360度パノラマカメラでバーチャル見学できるようにしていたり、土地などはGoogleストリートビューを利用するとだいたいの雰囲気がつかめたりしますので、家を探されている方は、現地見学を最小限にされる方も多いと思います。

今回のコラムでは、日々物件を沢山見ている不動産営業マンが、物件を見る際に着目してチェックしている項目の中から、簡単なポイントを3つお話します。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●不動産業者(プロ)が着目するポイントとは

不動産の営業マンは、いくらオンライン内見や映像資料が充実していても、現地を見ないで物件を判断する事はとても危険な事だとわかっていますので、日々新しい物件がリリースされると、現地を見に行ってメリット・デメリット両方を様々な角度から確認しています。私が営業している都内のエリアでは、リリースされる物件の数が多いので、営業マンは年間で数百件~1,000件近くの物件を見ています。

物件の現地を沢山見学してきた方と比べると、見学した物件が少ない方はその分、良い物件なのか、そうでないのか判断するのも難しくなりますが、それ以前にどのような視点で物件を見たら良いのかが、どうしても漠然としてしまいがちです。

皆さんは、物件を見学されている時に、どんなところを注目して見学されているでしょうか?

・物件の間取りが使いやすいかどうか?

・日当たりが良さそうかどうか?

・新しい(キレイ)かどうか?

・近くに何があるか?

などなど、気になるところはたくさんありますよね。

もちろん、いろいろな観点で物件を見学することが大事なのですが、日々物件を沢山見ている不動産営業マンは、物件を見る際に、特に次の3つの視点で物件を見ています。

<プロが着目するポイント>

1.そこで生活していることをイメージする

2.物件のリスクは敷地の隅っこに隠れている

3.周辺の雰囲気や住民の雰囲気を観察してみる

一つ一つ解説していきますね。

●そこで生活していることをイメージしてみる

不動産はあたりまえですが生活するために購入します。居心地の良さ、快適性は長い期間過ごすうえでとても大事ですよね。実は物件の現地見学に慣れていない方は、意外にも生活をイメージする視点を忘れてしまう方が多いんです。知らない土地やマンションを訪れて、なんとなく傍観者のような視点で見学してしまうのは仕方ない事ではあるのですが、わざわざご自分が現地に足を運んだわけですから、最大限の情報を収集して帰りたいですよね。

 土地でも、戸建でも、マンションでも着目するポイントは沢山あるのですが、一番簡単なのは物件の現地に着いた瞬間から(もっと言えば近づいてきたら)自分がそこに住んでいるという「仮想ゲーム」をしてみると良いと思います。「物件を見に来た」のではなく、「家に帰って来た」という前提で見ることを意識をするだけで、自然とご自分のなかで感じられる情報が増えますので試してみて頂けたらと思います。

たとえば、物件を見に行くときに、平日の仕事帰りということを「仮想」すれば、「駅前で外食してから家に帰ろうかな」とか、「多分このスーパー(またはコンビニ)で食材を買って帰るだろう」という事がイメージできます。また、物件から帰る際には、休日に出かけるシーンを「仮想」して、「あの公園で子供を遊ばせよう」とか、「このお店が多分お気に入りスポットになりそう」など、具体的にどんな暮らしになるか、イメージを膨らませてみてください。

また、家の中を見る際には、リビングだけでなく、各部屋の窓から見える景色を確認したり、ベランダに出てみたりといったことは必ずしてほしいです。家の中でも、「帰ってきたら、まずここで手を洗って、服を脱いで、リビングに移動する…」というご自分のスタイルに合わせて「動線」を確認し、間取りが合っているのか確認すると良いですね。また、基本的に、物件見学は基本的に立って見るだけの方が多いですが、リビングや和室では実際に座ってみて、その状態で窓から何が見えるか、落ち着くかどうかといった観点で確認するのもお勧めです。窓から見える景色というのは意外と重要です。

土地を見る際には、道路から見るのではなく、必ず土地の中に入って、家を建てた際に、玄関から出るたびに見える景色、リビングから見える景色などを、土地の内側からしっかり確認することが大事です。

●物件のリスクは敷地の隅っこに隠れている

これは土地・戸建を探される方向けですが、きれいな更地、古家が建っている土地、中古や新築の戸建でも共通しているのは「土地のリスク」という事になります。

見た目で分かる主な土地のリスクは・・・

(1)越境

お隣から何かが飛び出してきている、又はこちらからお隣に飛び出しているものがある事は、不動産の権利に係る問題を含んでいる場合があります

 (2)境界塀

崩れそう、どちらのものか判らない、どちらかから越境してしまっているなど、建築費用に直接係わる問題や、権利に係る問題を含んでいる場合があります

(3)残置物

土地の端っこに物置や樹木があったり、鉄骨や土留めコンクリートのかたまりが埋まったままになっている、井戸の形跡が残っているなどもあります。


上記の物の他にも、ガラクタや植木鉢など、契約時に気が付かずそのまま引き渡しを受けてしまうと、撤去や処分のお金は購入された方が負担しなければならなくなります。

●周辺の雰囲気や住民の雰囲気を観察してみる

マンションについては前回のコラムでもお話しましたが、戸建でも周辺の雰囲気や、どんな方が住んでいるのかなどはとても大切な要素になります。物件自体を気に入って、人生最大のお買い物をしたのに、周辺の住民問題や、住環境にあたまを悩ませるなんて絶対にしたくないですよね。

真剣に検討してみようかなと思う物件だった場合には、周辺を歩いてみたり、できるだけ長く滞在して、お隣や近隣の方を見かけた際にはどんな感じの方かな?と、さりげなく雰囲気をみてみましょう。そして、検討物件には何度か現地に足を運ぶことをおすすめします。時間帯を変えたり、雨の日に行ってみたり、駅から歩いてみたりして何度か現地を訪れると、よりいろいろな事が見えてくると思います。

マンションであれば、入り口付近やエレベーターにどんな張り紙や注意事項が書いてあるのかを見ると、住民のマナーのレベルを推し量ることができますし、戸建ての場合は、最寄りのゴミ捨て場が綺麗かどうか、町内会の掲示板に何が書かれているか、道の立て看板などからも色々な情報が読み取れます。特に女性や小さなお子様のいらっしゃるご家庭では、周辺で事件や犯罪が起きていないかなど、治安の良さもしっかり確認すると良いですね。

3つのポイントの1番目でお話した、そこに住んだつもりになる「仮想ゲーム」は、訪れる回数が増えるごとにリアルに体感できますので、1回目に現地に来たときは「良いな」と思ったけれど、2回目に来てみたらそうでもなかったり、逆に、来る度に「やっぱりここに住みたい」と感じるなど、その物件に対するご自身の感じ方もハッキリしてきます。

できれば、少なくとも3回くらいは、時間帯や曜日を変えて物件とその周辺を訪れてみることをお勧めします。

 

ということで、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

マイホーム探しにおいて、従来はできるだけたくさんの物件を見学して、ご自身の価値観を育てながら最高の1件を見つけるという事をお薦めしてきましたが、今のご時世では制限もありますので、少ない機会に最大の効果を得られる3つのポイントを是非意識してみてください。

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