売出中の物件が激減?!現在の不動産市況

2021年2月の不動産の売買成立件数や売り出し中の在庫件数を見ると、取引数は減っていないのに不動産の供給(新たに売り出す人)が増えず、どんどん在庫が少なくなっている状況が見て取れます。加えて新築マンションがリリースされる数も大幅に減少しており、在庫数は過去20年で最も少なくなっています。

これからマイホームを買いたいと思っている方、売りに出すか迷っている方は、ぜひ現在の不動産市況を理解したうえでご判断をいただければと思います。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●不動産市況には、需要と供給のサイクルがある!

通常の状態ですと、不動産も需要と供給のバランスによって価格の上下や在庫数の増減がおきるものです。

下図を見ていただくと分かりやすいですが、

(1)需要に対して供給が多い(物件が余っている)時は、価格が下がります。

(2)価格が減ると売りに出す人が減り供給(物件数)も少なくなっていきます。

(3)物件が少なくなると競争が激しくなり、価格が上がります。

(4)価格が上がると売りに出す人も増えますが、買い控えも起こるようになります。

基本的にはこのサイクルを繰り返して相場は動いていきますから、お得な時期にマイホームを購入したいと考えられている方は、ここ数年の相場を調べたうえで、「今は(1)~(4)のどの状態なのか?」ということを認識したうえで、売買の判断を行うということが非常に重要になってきます。

●では、今現在はどういう状況か?

2021年2月度の売買状況は首都圏では下図のような結果となっています。

前年度のコロナ禍深刻化の直前と比べてですが、中古マンションの成約件数はやや減となったものの、中古戸建は大きく伸び、成約単価も上がっています。

これだけ見ると、先ほどみていただいた図の(3)の状態(物件が少なくなり競争が始まって価格が上がっている)と捉えることができますね。

不動産の価格は去年の夏頃から上昇に転じているので、「高く売れるなら売りたい」と考える人も増えて、(4)の状態へ移行してもいいような気がするのですが、なぜか新しい中古物件の供給は伸びず、中古マンションも中古戸建も在庫がどんどん減っていっている状況です。(下図参照)

赤い線の成約件数は回復してきているのに、売りに出る物件が少ないので、どんどん在庫が減っていっている状態ですね。

過去20年を振り返ってもここまで在庫が少ないという状況は記憶にありません。

●なぜ相場が上がっているのに、売る人が少ないのか?

私が不動産業界に従事して約20年が経ちますが、現在の状況は「未経験」と言わざるを得ません。

原因としては諸説あり、

・新築マンションのリリースが近年大幅に減った影響

・緊急事態宣言下で一時的に様子見をしているだけ

・先が読めないので買い替えに対し積極的になれない

などなど、様々な見解が出ていますが、これは「仮説」でしかなく、本当の原因分析は中長期的に見ていかないとまだ分からないというのが正直なところです。

中古戸建の成約件数が伸びたのは、コロナ禍によって居住空間の広さを求めたり、土地に資産価値を見出すといった流れがあるという仮説は成り立ちますが、その傾向がどの地域でどのくらい継続していくものかはまだ何とも言えません。


とはいえ、現実問題として在庫件数が減っている状況であるということに変わりはないため、住宅ローン控除や住宅取得等資金贈与の特例などを最大限活用したいと考え、今年中にマイホームを買いたいと思っている方には、少し大変な状況かもしれません。

在庫が少ない状況では、気に入る物件が見つかりにくく、見つかっても競争が激しいので値下げ交渉もできず、売主の条件をそのままのまざるを得ないということも多く見られます。そのような中でも、「どうしても今!」という方は頑張って探さないといけないですし、そうでない方は、現状とご自身のライフプランを考えたうえで、今買うべきか、もう1、2年以上様子を見てから考えるべきなのか検証してみられると良いでしょう。

いずれにしても、在庫が少ない状況なので、早め早めに行動を開始して、物件の適正価格を見極める目を養っていただくと同時に、ご自身にとってどんな住まいが良いのか、マイホームに対する「自分軸」(優先度)を見定めておいていただければと思います。そうすれば、チャンスが来た時に迷わず判断・選択ができるはずです。


また、逆に売りたいなと思っていた方にとっては今は間違いなくチャンスの時期です。相場価格も高いうえに競争相手となる物件が少ない非常に稀な時期と言えます。この状態がいつまで続くのかは今のところ見通しが難しいのですが、最初にお見せした図の(4)の状態に移行すると、物件数が増えてきて価格を下げないとなかなか買ってもらえないという状況へ進んで行く可能性もあるからです。

投資用のマンションを買っては見たものの思うように利益が出ず、手放したいと思っている方には、一度リセットして将来のリスクを未然に防ぐ、またとないチャンスだと思います。もちろん現時点で十分利益が出たのでこの辺りでいったん売却して利益を確定させたいという方も、一度査定をしてみるといいかもしれません。

不動産が値上がりするのは一定の時間がかかりますが、過去のバブル崩壊、アメリカのテロ、リーマンショック、東日本大震災などの例を見ても、値下がりする時は瞬く間に潮目が変わります。

それが今年起きるのか、数年後なのかは誰にもわかりませんが、特にご自宅などの売却をお考えの方はこの機会にご検討されてみると良いと思います。


さて、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

「住まいの自分軸形成個別相談」ではマイホームの買い替えに関するコンサルティングも行っています。みなさんの現在のご自宅の売却金額・住宅ローン残債・お買換え先の物件購入まで、個別の状況を加味した一連のシミュレーションも行っておりますので、興味のある方はご活用頂ければと思います。

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