安易に行ってはいけない不動産投資

老後への不安などから、資産形成の手段として不動産投資を考えられている方もいらっしゃるかと思います。

不動産への投資は広く行われているものであり、それ自体に問題があるわけではないですが、十分な知識を持たない方がちょっと勉強して成功できるほど簡単ではないことも事実です。

近年、流行しているサラリーマン向けのワンルームマンション投資などで気を付けるべき点をまとめてみましたのでご覧ください。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

こんな話が来たら要注意!

皆さんは、様々な不動産関連のセミナーや、電話での勧誘などで、ワンルームマンション投資を勧められたことはないでしょうか?

全てが該当するわけではありませんが、もしこのような話が来た場合は、一旦立ち止まってじっくり考えてください。

皆さんは、この話のどこに、どんな問題があるかお分かりでしょうか?

ポイントは下記の5つですね。

(1)ローンを組んで不動産投資(自己資金ゼロでもOK)

(2)新築の物件

(3)家賃保証がある(サブリース契約を結ぶ)

(4)節税というキーワード

(5)初めてでも大丈夫

実はこの5つ全てに問題がある可能性が高いのです。

原理原則として、投資は利益を出さないと意味がない

まず、本来あるべき不動産投資の姿を思い浮かべてみてください。

当然のことながら、投資は利益を出さないと意味がないですよね?

通常、プロフェッショナルに不動産投資をされている人の月々の収支の状況は下記のようになっています。

私も投資用の物件を持っていますが、全て下記の状態です。というのも、この状態にならないのであれば、その物件には手を出さないからです。


特に注意していただきたいのが、「節税」や「家賃保証」をキーワードにしているような不動産投資です。

給与との損益通算によって節税するということは、「損」が出ているということなのです。



支出が膨らむ原因の多くは

・ローンの利息部分の返済(住宅ローンに比べて高い投資用の金利)

・家賃保証のためのサブリース費用

などです。

この構造で、確実に儲かるのは、「物件を売った不動産屋」「サブリース会社(売主のことも多い)」「銀行」だけだということを理解しておきましょう。

家賃保証(サブリース契約)の仕組みは?

不動産を購入して、家賃収入を得ようと思った時に、真っ先に浮かぶ不安は、「空室リスク」ですよね。それをカバーするため、「家賃保証」がありますよ、というのもよくある営業トークです。まず、この家賃保証の仕組みを理解しておく必要があります。

家賃保証は基本的に下図のような仕組みで実現されています。

サブリースという言葉を聞かれたことがありますでしょうか?

サブリース契約とは、それを行う会社がオーナーから部屋を借り上げ、実際の入居者に又貸しし、代わりにオーナーに決まった賃料を払うというものです。つまり、サブリース契約とは、「賃貸借契約」なのです。

日本の法律では、大家さんより部屋を「借りている人の方が保護されている」ということはご存じですよね。上の図で言うと、マンションオーナーは「大家さん」、サブリース会社は「借りている人」なので、入居が見込めなくなり、家賃を保証できなくなれば、サブリース会社から一方的に契約を解除できるようになっているケースが多いので、契約内容をしっかりと精査する必要があります。(ご自分で判断できないという場合には、第三者のプロに見てもらう必要があります。)

また、サブリース会社は、誰にいくらで転貸(又貸し)しているかを報告する義務がないため、リアルタイムで自分の物件の運用状況がどうなっているのか分かりません。

例えば、「賃借人がどんな人なのか?」「家賃支払いの状況はどうなのか?」などが分からないため、知らないうちに賃貸経営が厳しくなっていて、ある日突然サブリース会社から解約を申し出られてトラブルになるという事もあります。

不動産投資で利益を得るためには?

最終的に不動産投資で利益を得るためには、不動産を取得してから、家賃収入を得て、売却するまでのトータルの収支がプラスになっている必要があります。

下図をみていただくと分かりますが、費用として必要な「ローンの利息」「維持費」「物件の購入原価」は、購入時にほぼ確定しています。

一方で、家賃収入やいくらで物件が売れるかということについては、不確定な要素が非常に多いのです。

家賃や不動産の価格は、不動産相場が同じという前提で考えた時、年月が経つにつれて下がっていくのが普通です。インフレや土地の価格が上昇し、物件価格自体が今後上がるということを期待される方もいますが、あくまで「不確定な要素」です。

利益の方が費用より大きいという状態にするためには、極力費用を抑え、資産価値が下がらないような物件を選ぶことが大事です。空室リスクがあるような物件は、物件の資産価値も下がる可能性が高いということですから、サブリース契約が必要のない(=空室リスクが少ない)物件を選び、購入時の経費を抑えられるように、新築ではなく「価格の値下がり幅が少ない年代の中古物件」を検討するなども大事ですね。

いずれにしても、もしローンを組んで不動産投資をする場合、失敗したでは済まないので、不動産についてしっかり勉強したうえで、綿密な計画を立て、第三者の意見も聞きながら決めるということが大事です。

不動産投資で成功する人はこんな人

不動産投資で成功している人も世の中にはたくさんいますが、そういった方の特徴として挙げられるのは以下のようなものです。

(1)不動産投資=不動産「経営」と心得ている。

(2)少なくとも物件価格の2~3割の自己資金を持ってスタートできる

(3)サブリース契約を結ばずに経営できる

    ・空室リスクがある物件をそもそも買わない

    ・もし空室が出てもそれを埋める策を自分で講じるのがオーナーの仕事と分かっている。

(4)不動産が好きで、しっかり勉強でき、情報をアップデートし続けられる。


皆さんはいくつ当てはまりますか?

投資の中でも、不動産はいわゆる「目利き」も大事ですが、それ以上に「自分自身の経営力」が問われます。

会社経営を他力でできると思っている方は少ないのと同じで、不動産投資は「自分が借金をして会社を興し、経営していくのと同じである」という認識をまずは持っていただき、それでも真剣に「やってみたい!」と思う方は、時間をかけて勉強して取り組む価値のある投資ではあります。

反面、損だけは済まない負の遺産となってしまっている方も多く、リカバリーが難しいものなので、無料セミナーや勧誘など、入り口のハードルが低い不動産投資には十分気をつけていただけたらと思います。


今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

個別相談「住まいの自分軸形成」は、投資用物件に関しては、本来は対象ではありませんが、不動産投資を始めるべきかどうか迷われているという方については、不動産投資のリスクを正しくご理解いただき、ご自身に合っているのかどうかを確認するという観点で、対応させていただきます。配偶者やご家族の方が上記リスクを理解せずに、不動産投資を始めようとされている場合も、ご一緒にご面談いただければ、ご質問等にもお答えさせていただきます。まずはお気軽にお問い合わせください。

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