新しいNISA制度が目指すものは?

2020年度の税制改正大綱により、NISA制度の見直しと延長が決定されました。

具体的には

・一般NISAを2階建ての新NISA(仮)制度に見直して5年間延長

・ジュニアNISAは2023年末に終了(延長なし)

・つみたてNISAの5年間延長

ということです。

今回のコラムでは、これらの変更点を押さえていただきながら、国の方針や狙いがどこにあるのか?ということを見ていきましょう。

【コラムニスト】

 ファイナンシャルプランナー 三井明子

●そもそもNISAってなんだ?

まずは、現在のNISA制度について概要を再度整理しておきましょう。

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資として利益を得た場合、約20%の税金がかかります。NISAは、専用の口座「NISA口座」を開設し、その口座内で毎年一定の金額内で購入した金融商品から得られた利益に対して税金がかからなくなる制度(非課税制度)です。

イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。


NISAには、「一般NISA」「ジュニアNISA」「つみたてNISA」の3種類があります。

1人の方が一般NISAとつみたてNISAの両方を行うということはできません。(お子様のジュニアNISAはOK)

(1)一般NISAとは

少額から株式や投資信託等(ETFやリートも含まれる)への投資を行う方のための非課税制度で、2014年1月にスートしました。毎年120万円を上限として新規投資が可能で、購入した株式や投資信託等への配当金・分配金・譲渡益などに最長5年間課税されません。5年経過の後は、翌年の非課税枠を活用して再度5年間非課税で運用すること(ロールオーバー)が可能です。

ただし、NISA口座以外の一般口座や特定口座との損益通算はできません。

(2)ジュニアNISAとは

ジュニアNISAとは、いわば子ども用のNISAです。一般NISAやつみたてNISAは日本にお住いの20歳以上の方が対象ですが、ジュニアNISAは0歳~19歳の方が対象となります。新規投資可能額は年間で毎年80万円となり、18歳までは原則として払い出せませんが、最長5年間は非課税で運用できますし、ロールオーバーも可能です。

(3)つみたてNISAとは

その名の通り、毎月少額ずつ投資信託を継続購入して積み立てていくことを支援するための非課税制度で、2018年1月からスタートしました。毎年40万円を上限として新規投資が可能で、購入した投資信託の分配金や譲渡益に対して、最長20年間課税されません。対象となる投資信託は金融庁が認めたものとなっており、2020年12月23日時点で167本です。

●NISA制度の見直しについて

今回の税制改正でNISA制度が2024年から生まれ変わることになったのですが、これまでの利用状況から、あまり利用されてこなかった「ジュニアNISA」は2023年で終了(延長はなし)ということになりました。

<これまでのNISA利用状況> ※2019年9月末時点 

(1)一般NISA:2014年~2023年まで

  開設された口座数:約1,170万口座

  総買付額:約17兆円

(2)ジュニアNISA:2016年~2023年まで

  開設された口座数:約34万口座

  総買付額:約1,500億円

(3)つみたてNISA

  開設された口座数:約171万口座

  総買付額:約2,300億円


しかし一方で、一般NISAとつみたてNISAの口座開設可能期間は、それぞれ5年間延長されることになりました。

<口座開設可能期間の延長が決定> 

(1)一般NISA:2014年~2023年まで → 5年間延長!2028年まで

(2)ジュニアNISA:2016年~2023年まで → 延長なし

(3)つみたてNISA:2018年~2037年まで → 5年間延長!2042年まで


そして、「一般NISA」については、2024年から「新・NISA(仮称)」として制度内容も見直されることになりました。

●新NISA(仮称)の仕組みを教えて!

2024年より新NISAでは、下図のように、現在のつみたてNISAと同じ1階部分と、現行の一般NISAとほぼ同じ2階部分に分かれます。人生100年時代にふさわしい家計の安定的な資産形成を支援していく観点から、少額からの積立・分散投資を促進する狙いです。

1階の積立部分の利用は必須となりますが、20万円の枠を使い切らなくても、2階部分への投資が可能です。ただし、1階を使い切っていない場合でも、2階部分の上限は102万円のままです。また、安定的な資産形成に不向きとされる、高いレバレッジを効かせた投資信託等、リスクの高いものは2階部分でも選ぶことができなくなりました。

国としても、より安定的で安全な投資手法として「ドル・コスト平均法」を用いた積立投資をもっと推奨していきたいということですね。

「なぜこの積立投資が、より安全性が高いと言えるのか?」ということについては、「マネーセミナー」の第三章STEP2「ダブルの分散でリスク回避」で詳しく解説していますので、ぜひそちらも合わせてご確認ください。

●既にNISAを始めている人はどうなるの?

すでに一般NISAやジュニアNISAを始められている方は、新制度が始まった時に、今持っている株式や投資信託がどうなるのか、心配ですよね。

NISAのそもそもの政策目的は「家計の安定的な資産形成の支援」「成長資金の供給拡大」ですので、できるだけ安定的な成長を見込める銘柄を長期で保有して欲しいという狙いがあります。したがって、既に一般NISAを始められている人が新制度へスムーズへ移行できることがとても重要なのです。

例えば、既にNISA口座で購入し、保有していた株式が102万円を超えている場合に、一度売却して現金化してから102万円分のみを新たに購入し直すといった必要は無く、5年間の非課税期間終了時の価格(時価)でそのまま新NISAへ移行(ロールオーバー)できる予定です。その金額が新NISAの2階部分と1階部分を足した122万円を超えていても、全額を新NISAの2階部分に入れることができます。この場合は、例外的に1階部分の積立が不要となる予定です。

(2024年以降、新NISAの対象から除外される高レバレッジの投資商品を現在のNISA口座でお持ちの方は、今後の金融庁からの広報や周知にご注目ください。)

また、ジュニアNISAについては、2024年以降、新規の投資はできなくなりますが、お子様が18歳になるまで引き続き保有が可能です。ジュニアNISAは利用実績が乏しいことから、今回延長されずに2023年で終了となることが決まり残念ですが、欧米では小学校の高学年くらいから金融リテラシー教育を始めることが推奨されています。これからの時代を生き抜くためにも、お子様の金融教育もぜひご検討ください。


なお、つみたてNISAは引き続き2042年まで新規投資可能ですので、まだ始められていない方は一般NISA(→新NISA)ではなく、今からつみたてNISAを選択して始めるというのも良い選択だと思います。


ということで、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

金融庁も推奨する「積立投資」の考え方をぜひしっかりご理解いただき、安定した資産形成を計画的に始めていただければと思います。

今回の内容が少し難しいと感じた方は、「マネーセミナー」の動画をご覧いただくか、ファイナンシャルプランナーによる個別相談でも、もっと易しく分かりやい形で個別にフォローさせていただきますので、併せてご利用ください。

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