源泉徴収票を見れば、いくら節税できるか分かる!

・税金のことはよく分からないけど、ちょっと勉強してみたい・・・

・節税したいけど、何から始めていいのか分からない・・・

・いくら節税できる余地があるのか知りたい・・・

そんな方は、まず「源泉徴収票」の見方を知っておきましょう!

【コラムニスト】

 ファイナンシャルプランナー 三井明子

●源泉徴収票の見方

ぱっと見、よく分からない源泉徴収票ですが、下記の情報が書かれています。

(1)年収(額面):会社から支給された金額

(2)給与所得控除後の金額:一定の給与所得控除(サラリーマンの必要経費として認められた部分)を引いた金額

(3)所得控除の額の合計:社会保険料や生命保険料控除など、所得から差し引いて税金を計算できる金額

(4)源泉徴収税額:1年間に支払った所得税

(5)社会保険料等の金額:厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料等の合計

(6)生命保険料控除:生命保険に加入している場合、年末調整で申告をした場合の控除金額

(7)地震保険料控除、住宅借入金等特別控除の額:住宅に関する控除

その他、扶養している人がいる場合は、その人数など、税金の算出に関する様々な情報が載っています。

●控除には2種類ある!

控除とは、控えて除くと書きますが、「一定の金額を差し引く」という意味です。

税金を軽くすることができる控除には大きく分けて「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。

<所得控除>

 課税の対象となる所得(課税所得)を減らすことで、税金が減ります。

 「控除した額×課税所得に応じた税率」が実際に減る税金となります。

<税額控除>

 税金そのものを減らすことができる制度です。

●所得控除の額を確認する

所得控除とは、個人の経済事情(「家族に所得はあるか」「どのくらい生命保険料を払っているか」など)を、税金の計算に反映させる仕組みです。

所得控除は全部で14種類あります。

所得控除を受ければその分、課税される所得が減りますから税金の負担も軽くなります。

個人年金、個人型確定拠出年金iDeco、ふるさと納税など、自分の意思で所得控除を活用できるものもあります。


(1)基礎控除

 誰でも無条件に受けられる控除(38万円)

(2)社会保険料控除

 社会保険料控除は、国民健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料、介護保険料、後期高齢者保険料などを負担している人が受けられます。

 生計を一にする配偶者や扶養親族が負担する保険料を支払ったり、給与から控除されたりする場合には、その全額を納税者本人の所得から控除することができます。

(3)生命保険料控除

 生命保険、個人年金、介護医療の保険料を支払っている人が受けられます。(最高12万円)

(4)地震保険料控除

 地震保険などの損害保険料を支払っている人が受けられます。(最高5万円)

(5)寄付金控除★

 国や公益法人などに特定の寄附金を支払った人が受けられます。

 「ふるさと納税」も寄附金控除のひとつです。確定申告不要となるワンストップ特例制度あり。

 (寄附金の額-2,000円 または 総所得金額等×40%-2,000円 の多い方)

(6)医療費控除★

 多額の医療費(10万円超)がかかった人が受けられます。

 自分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために支払った治療費も控除の対象となります。

 (医療費-10万円 または 医療費-総所得金額等×5% の多い方)

(7)雑損控除★

 災害、盗難、横領によって住宅家財などに損失が生じた時に損失金額を控除できます。

 詐欺や恐喝による被害は対象外となります。

 (損失額-総所得金額等×10% または 災害関連支出額-5万円 の多い方)

(8)小規模企業共済等掛金控除

 小規模企業共済掛金、確定拠出年金(iDeCo)などを支払っている人が受けられます。

 (1年間に支払った全額)

 ※企業型の確定拠出年金の場合は、拠出した金額は給与ではないので、所得とみなされません。

  したがって、源泉徴収票の支払金額がその分最初から低くなっています。

(9)配偶者控除

 合計所得が38万円以下の配偶者がいる人が受けられます。

 平成30年(2018年)から、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用がなくなりました。

 (控除額は、納税者本人の合計所得金額によって異なります。)

(10)配偶者特別控除

 配偶者の合計所得が38万円超123万円未満で、配偶者控除を受けられない配偶者のいる人が受けられます。

 この配偶者特別控除も、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用がなくなりました。

 (控除額は、納税者本人の合計所得金額によって異なります。)

(11)扶養控除

 合計所得が38万円以下の子どもや両親、兄弟姉妹などの扶養親族のうち、控除対象扶養親族がいる人が受けられます。

 (扶養控除の額は、非扶養親族の年齢によって異なります。)

(12)寡婦(寡夫)控除

 配偶者と離婚または死別した寡婦(寡夫)が受けられます。

 総所得金額が基礎控除額以下の子どもがいるか、または合計所得金額が500万円以下であれば、寡婦となります。

 寡夫の場合には、合計所得金額が500万円以下で、かつ扶養親族である子どもがいることが条件となります。

 (27万円 ※特別の寡婦に該当する時は35万円)

(13)障害者控除

 自分や控除対象配偶者、扶養家族が障害者の場合に受けられます。

 (一人につき27万円。特別障害者は一人につき40万円。同居特別障害者は一人につき75万円)

(14)勤労学生控除

 納税者自身が勤労学生に該当する場合に受けられます。

 アルバイトをしている学生本人が、自分の収入から勤労学生控除を差し引けるのは、給与収入が130万円までです。

 (27万円)


★確定申告をしないと所得控除が受けられないもの

●税額控除について

税額控除は、控除額がそのまま直接所得税から差し引けるため、所得控除より節税効果は大きいです。


(1)住宅ローン控除

住宅ローンを組んで、マイホームを新築・購入・増改築した人が受けられます。

控除額は住宅ローンの残高をもとに計算します。

控除を受けるためには、サラリーマンも最初の年には確定申告をする必要があります。


また、住宅ローン控除を受けるための条件は以下の通りです。

(※令和2年の税制に基づく。令和3年より一部変更予定です。)

<住宅ローン控除の要件>

 ・合計所得金額が3000万円以下であること

 ・ローン返済期間が10年以上であること

 ・所得または増改得してから6カ月以内に住むこと

 ・住宅の床面積が登記簿上で50㎡以上であること(※2021年より変更予定)

 ・中古住宅の場合は建築後20年以内、中古マンションの場合は建築後25年以内の物件であること(一定の新耐震基準等の適用あり)


<住宅ローンの控除額>

 通常住宅の場合…最高40万円

 認定住宅の場合…最高50万円


(2)配当控除

配当所得のある人が受けられます。

配当所得とは、法人から受ける利益の配当、基金利息、証券投資信託の利益の分配による所得のことです。


(3)外国税額控除

納付した外国所得税などがある人が受けられます。

これは、国際的な二重課税を防止するために設けられた制度です。


(4)源泉徴収税額

源泉徴収制度は、国が会社に対して給与にかかる所得税の徴収事務を代行させている制度です。給与から天引きされ、会社などを通して既に支払った税額なので、支払済の所得税と復興特別所得税を控除することができます。


(5)災害減免額

自然災害や火災などで、住宅や家財に損害を受けた人が受けられます。

災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険等で補てんされる額を除く)が、その時価の2分の1以上で、かつ災害に遭った年の所得金額の合計額が1000万円以下であれば、災害減免法の適用を受けることができます。

ただし、所得控除の「雑損控除」併用はできず、どちらかを選択して適用となります。

今回のコラムはここまでですが、いかがでしたでしょうか?

毎年受け取る源泉徴収票をじっくり見ていただき、受けられる控除はしっかり受けましょう。

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