長い老後をどうする?今から考えるセカンドライフ

人生100年時代は多くの人が健康で長生きする時代といえます。それにも関わらず、60歳半ばで社会とのつながりが急速に失われているという現実があります。

皆さんは人生の集大成であるセカンドライフにどんな暮らしをお望みでしょうか?

お若いうちから将来を見据えて、計画的にキャリア形成や人脈づくり、資金計画を立てておけばハッピーなセカンドライフを過ごせると思います。今回のコラムが「これから」を考えるきっかけになれば幸いです。

【コラムニスト】

 ファイナンシャルプランナー 三井明子

●日本の健康寿命は世界でもトップクラス

医療や生活環境の向上によって、日本人の健康寿命(健康上の問題で日常生活を制限することなく生活できる期間)はどんどん延びています。今の70代の方の体力や運動能力は15年前にくらべると5歳ほどは若いとも言われ、何歳から高齢者と言うべきか迷うほどです。

現在は、定年を60歳から65歳に引き上げる企業が増えたり、国からの老齢年金の支給も基本的には65歳からということになっていますが、この健康寿命の延びに追い付いていないような気もします。下図をみていただくと分かる通り、65歳から健康に働くこともできる健康寿命までの年数は男女平均して8.5年です。

もちろん個人差はありますが、70歳くらいまでは元気に働くことができるという方は多いと思います。また、内閣府の調査によると、60歳以上でお仕事をされている方の42%は「働けるうちはずっと働きたい」と考えていて、70歳くらいまで働きたいという方も21.9%となっています。

これは、実際に私がファイナンシャルプランナーとして、現役世代の方にヒアリングをした時の回答と感覚的には同じです。

●実際に就職先やお仕事があるかどうかはまた別の問題

60歳以上の方の就業状況について見てみると、男性の場合60歳~64歳で77.1%となっており、ほとんどの方が就労できている状況です。ただ、それが65歳を超えると53%とおよそ半分になり、70歳を超えると32.5%まで減少します。

女性の場合は、就業率が60歳~64歳で50.8%、65歳~69歳で33.3%、70歳~74歳で18.8%と落ち込みがより大きく、男性より健康寿命も平均寿命も長いのにお仕事に就いていないという状況が起こっています。(下図の赤い部分は非労働力人口であり、黄色い部分が完全失業者です。)

65歳以降も働きたいと思われている方は、計画的なキャリア形成や人脈作りを現役時代からしっかりと行っておくことが重要ですし、ご自分で事業を始めることを考えている方は、綿密な事情計画を立てたり、予行演習をすることも大事だと思います。定年退職してからゆっくり考えるというのは、資金に余裕があればまだ良いのですが、うまく進まない時に焦りや不安から冷静な判断を失い、悪循環に陥ることもあるので注意が必要です。

また、現役時代にしっかり働いて、老後は早くにリタイアして趣味や家族との時間を大切にしたいという方もいらっしゃるかと思います。その場合は、老後の生活を支えるためのお金を早くから計画的に準備しておく必要がありますね。

●定年後の生き甲斐はどこにあるのか?

内閣府が高齢者に意識調査を行った結果、仕事や家族のある高齢者に比べると、一人暮らしや仕事がない状況では生き甲斐を感じにくいという調査結果が出ています。


~「生きがいを全く感じていない」または「生き甲斐をあまり感じていない」と答えた方の割合~

○ 1人暮らし:31.6%

○ 仕事はしていない:23.1%

○ 3世代世帯:14.3%

○ 会社の常勤・顧問等:11.3%

(出典:内閣府「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果」)


私自身も今現在は一人暮らしですので、改めて調査結果を見るとちょっとドキっとしてしまいましたが、生き甲斐=幸せだと思うので、自分の人生についてよく考えたいと思いました。私は幸いにも無二の親友や、一緒に色んな事業をやって世の中の役に立ちたいと語り合える仲間、そして人生の先輩、後輩にも恵まれていますので、そういった人脈を大切にしていけば、たとえ一人暮らしでも十分に生き甲斐は感じれるかなと思っています。

お金で買えないものの中に、本当の生き甲斐はあるのかもしれませんね。


私がこれまでお客様と一緒にライフプランニングを行ってきて、一番心配に思ったのは「何がしたいか分からない」「やりたいことが思い浮かばない」というお声を聞いた時です。現役時代に一生懸命お仕事をされていて、なかなか趣味を見つけることもできなかったという方の中には、定年後にどうしていいか分からず引きこもってしまうという場合もありえます。

人生にはバランスが大事ですので、仕事と遊びの両方を充実させることや、いろいろな世代、業種、職業の方々と接点を持つという取り組みを早くから続けていくことが大きな糧になると思います。社外活動(趣味、サークル、PTA活動etc)によって、会社とは「異なる環境」、「異なる文化」に日常的に接してこられた方は、セカンドライフへの適応もスムーズに行えます。

人生が100年なら、65歳以上のセカンドライフは35年ということですから、多様で複線的な社会参画によって、

○ 年齢に関係なく収入を確保し

○ 健康な体と生き甲斐(こころの健康)を得て

○ つながりや居場所をもつ

ということができれば、本当の意味での持続可能な社会が実現できると思います。


こういったことは、急にできることでもないので、早くから将来を見据えて、ご自分なりのライフプランやキャリアプラン、人脈づくりをしていただければ幸いです。

FPによる個別相談「ライフプランとリスクマネジメント」でも、10年先、20年先、30年先と段階を追って一緒にに考えていくということをしていますので、ぜひこれらのことについて専門家のアドバイスも参考にしていただければと思います。


さて、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

ご自分が「どんな人生に幸せを感じるのか?」ということから、考えるきっかけにしていただければ幸いです。

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