住宅購入で資金援助を受けるなら今年がチャンス?!

今回のコラムは、住宅購入に際して、ご両親や祖父母などから資金援助を受ける予定がある方、またはご自分のお子様やお孫さんへ資金援助してあげたいとお考えの方は必見です。

普通に贈与すると贈与税がかかる場合でも、住宅購入に際して行われる贈与に関しては様々な特例や制度を利用することで、税金の負担を軽くすることができるので、ぜひ知っておいてください。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●普通に贈与した場合にどのくらい税金がかかる?

まず、何の特例や制度も使わずに、資金を援助したり、土地をあげたりした場合には、家族間の贈与でも贈与税を払わなくてはいけません。

贈与税の計算は、誰から誰にあげるかで、税率が変わりますが、住宅購入に関する資金の援助では、ご両親かおじいちゃん、おばあちゃん(直系尊属といいます)から、20歳以上のお子さん、お孫さんへの贈与となると思いますので、その前提でご説明します。

贈与税は下記の表をで計算するのですが、年間110万円までの贈与に対しては、基礎控除があるので、税金がかかりません。

それを超えた部分に対して、対応する税率をかけたうえで控除額を引いて計算します。

この例ですと、1,500万円贈与すると366万円かかるということですね。かなりな金額です。せっかく贈与したりされたりするのであれば、できるだけこういった負担は減らしたいですよね。

●今年がチャンス?! 住宅資金贈与の非課税の特例延長決定!!

実は、住宅資金の贈与については、最大1,500万円まで非課税となる可能性があります。

本来は今年4月から非課税限度額が縮小される予定でしたが、 ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、令和3年度税制改正では昨年と同じ特例非課税限度額が継続されることになりました。

下表のように、色々な要件や期限を満たす必要はありますが、これを利用しない手はないと思います。

【主な要件と期限】 

上記の特例を受けるための受贈者(贈与される人)の主な要件と期限は下記のとおりです。

 ・贈与を受けるのは贈与者の直系卑属(子や孫)である

 ・贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上である

 ・贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である

 取得の期限:贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用の家屋を新築や取得等をすること

 ・居住の期限:贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること

※他にも細かい要件がありますので、適用できるかどうかは税理士や不動産業者によく確認してください。)

●住宅取得等資金の非課税制度でカバーしきれない時は?

住宅取得等資金の非課税制度でカバーできない部分が、110万円以下の場合は贈与の基礎控除でカバーできます。それを超える贈与を受ける場合に、検討できる対策例をいくつかご紹介します。

※どの方法が効果的かについては個人個人の状況で異なりますので、必ず税理士にご相談ください。

<相続時精算課制度を利用する>

「相続時精算課税制度」は、「とりあえず今は2,500万円までは贈与税をかけないから、後で相続する時に贈与した分を含めて相続税としてまとめて税金払ってね」という制度です。法定相続人の数が多かったり、親がこれから自分の財産を生活費として使っていくので、亡くなった時にはあまり相続するものが残らないということが想定される場合には有効かもしれません。

ただし、この制度を使う場合は、同じ贈与者からそれ以降に贈与を受ける場合、年間110万円の贈与税の非課税枠は使えなくなりますし、現金ではなく土地などを相続する場合には「小規模宅地等の特例」という、土地の相続税評価を最大80%下げられる特例が受けられなくなるので注意が必要です。また、一度この届出を出すと後から撤回できない(※2020年1月時点での税制による)など、弊害もあるので実際には利用されないケースが多いです。


<持ち分を持ってもらい不動産として相続する>

お金を一部負担してもらう代わりに、購入する住宅(土地・建物)の持ち分もご両親に持ってもらい、亡くなった時に不動産の持分を相続する(小規模宅地の特例が使える!)という方法もあります。名義の書き換え費用は発生しますが、一般的に現金で相続するよりも不動産で相続する方が節税できるので、合理的で自由度も高いことが多いです。

<ご両親と金銭消費貸借契約を結び、お金を借りる形を取る>

実態としてお金を返していないといけませんが、抵当権の設定登記費用や金融機関の手数料、金利(利子)を払う必要がない分、お得です。


ご両親やおじいちゃんおばあちゃんからのある程度まとまった金額の贈与については、お互いの今後のライフプランや将来的な見通しも含めて検討したうえで、どの方法がベストかを決めていくことになります。ご家族同士ではもちろんのこと、ファインシャルプランナーと一緒に今後の収支をシミュレーションしてみたり、税金については税理士とも相談し、確認したうえで決められると良いと思います。


ということで、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

実際に不動産購入のタイミングで有効な相続対策を行うというケースはたくさんありますので、この機会にそういった知識を身に着けて頂き、ご両親からの相続やご自身の将来のお子様への相続に、不動産を上手に活用して頂ければと思います。

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