購入後の建物に不具合があったらどうする?!

購入した物件に不具合が見つかってしまったら、本当にショックですよね。

まず、不動産を購入する場合、その物件のほとんどには売主の「契約不適合責任」というものが契約内容に含まれています。これは、購入した物件に隠れた不具合が見つかった際に、一定の範囲でその修理費用などを売主が負担するというものです。今回は、不運にして購入した物件に不具合が見つかった場合、どのような補償や、対策があるのかをお話ししていきます。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●「契約不適合責任」で補償してもらえる範囲は?

実は物件によって、契約不適合責任として補償してもらえる内容は違います。

このように、物件の種類によって、それぞれの補償範囲や期間にだいぶ違いがあることがわかります。また、もともと販売の条件として契約不適合責任「免責」(不具合があっても売主は補償しない)の物件や、契約条件交渉のなかで契約不適合免責となる物件もあります。代表的な例は、築年数が20年~30年を超えるような古い中古戸建です。「物件価格が土地の値段なので建物の性能は補償しません」というものです。

例えば見た目が意外と新しくても、実は雨漏りがひどいとか、傾いていることがわかっているなど、その建物を再利用するにはかなりの費用がかかるので、土地の値段で売っているような物件です。つまり、こういった物件は買った方がなんとか家を修繕して使っても良いですし、建物を解体して新しい家を建てても良いですが、建物を使える中古戸建よりも値段が安く設定されているので売主は契約不適合責任は負いませんという事ですね。

それから、この契約不適合責任免責の物件が戸建物件の場合、注意点があります。「建物」の契約不適合責任は免責でも「土地」には契約不適合責任を付けてもらうべきです。地中には何が隠れているか誰にもわかりません。少なくとも土地の価値に相当するお金は払う=土地については契約不適合責任を売主に負ってもらうべきなので、通常の場合には「建物」だけ契約不適合責任免責とするケースがほとんどです。

仮に土地を契約不適合責任免責で購入するという事は、購入後にその土地からなにか出てきても自分で処理できるくらい安く購入できる場合に限られると考えておいたほうが良いです。

●不具合が見つかった場合どうなるのか?

私が売買した物件でも、過去にこういった不具合が見つかった例は何度もあります。

例えば購入後にリフォームをした際に、壁を壊したら雨漏りが見つかったとか、柱のあちこちをシロアリに食べられてしまっていたことも何度かあります。いずれにしても、すぐに仲介した私のところに連絡がきます。購入された方はとてもショックを受けられていますが、契約上それを理由にお金を返してもらって解約をすることはほぼできません。

一方で最初にお話した通り契約書には、売主は不具合があると知らなかったとしても、引渡し後一定期間内に起きた不具合に対しては、買主へ一定の補償をしなければならないという取決めがあります。売主も買主も感情的にはなかなか納得できませんが、契約書の取り決めに則って、協力して粛々と不具合の是正を行っていくことになります。

その際に、不具合の種類によって、売主に全額費用を負担してもらえるものと、売主の責任範囲外のものとがあり、かならずしも買主が費用を負担しなくても良いというケースだけではありません。特に中古は、雨漏りなどの不具合が見つかった時に、そのほかのところを調べていくと経年劣化で、壊れているとまで言えないけれど、交換したほうが良い部位が見つかる事もあります。契約書上で取り決めされている契約不適合責任は実際に被害が出ているもの、壊れているものに限定されますので、直しておいた方が良い部分に関しては、買主が自分でお金を払って直してもらう必要があります。

●購入前に建物のリスクを調査してくれる「ホームインスペクション」

いずれにしても、「契約前に知っておきたかった」という不具合は中古の場合、往々にして出てくることがあります。そういったリスクを回避するために近年では「ホームインスペクション(住宅診断)」という、建物調査を行ってくれる業者がいます。

購入したい中古物件が見つかったけれど、「隠れた不具合が出たらどうしよう」という不安は付きものです。ホームインスペクションは、建物を壊すことなく、プロのホームインスペクター(住宅診断士)が目視で確認できる範囲で不具合の可能性が無いか確認してくれるサービスで、物件の種類や検査のメニューにもよりますが、通常の検査であれば5万円~20万円で行うことが出来ます。

購入する前の段階でかかる費用なので、もし不具合が見つかって購入をやめたらそのお金は無駄になってしまうことになりますが、数千万円というお金を払った後に、重大な不具合が見つかってしまうリスクを考えると、価値のあるサービスだと思います。但し、ホームインスペクションを行うには、その物件の売主様の許可が必要になりますので、実施させてもらえないケースもありますし、目視で確認できなかった不具合があとで出てくることもあります。とはいえ、プロのインスペクターはたくさんの不具合事例を見てきていますので、外から見ても一見気づかないような不具合も経験則で見つけてくれることもあります。

また、中古物件は一定の年数が経つと何も不具合が無いという物件は少ないので、ホームインスペクションを行うと指摘事項が出てきますが、「ここが劣化しているのでこういった対策をしておくと良いですよ」という箇所をまとめたレポートももらえるので、重大な不具合が見つからなくても、今後住むうえで気を付ける点などが明確になるという意味でもお薦めです。

注意点としては、リフォーム業者さんと提携しているホームインスペクションの会社は、過度に不安をあおってリフォーム工事受注につなげようとするような悪質な業者さんもいるので、しっかりと調べて依頼したほうが良いです。また、これとは別に「瑕疵保険」という、建物に不具合が見つかった場合の保険付きの物件も最近増えています。

●不具合が見つかった場合の保険(瑕疵保険)

瑕疵(かし)とは、不具合やきずのことですが、造成不良や設備の故障など、取引の目的である土地・建物に何らかの欠陥があることをいいます。そういった不具合を補償するため、売主などは瑕疵保険という保険に入るのですが、ただ、この瑕疵保険、手放しで安心という訳ではありません。

例えば住宅業界でメジャーな保険会社の瑕疵保険でも、経年劣化による不具合は補償対象外という事がほとんどで、建築当初の施工不良に起因する不具合でなければ、結果的には意味がない場合も多く見受けられます。この事実を知らないでお客様に「瑕疵保険がついているから安心です!」という説明をしてしまう不動産営業マンはたくさんいます。

購入後の不具合トラブルを回避するために、気に入った物件が瑕疵保険付きでも、保険の内容をご自身で必ずチェックする事と、上記のような保険の場合にはやはりホームインスペクションを行うことが有効だと思います。

もし、気に入った物件があって、売主がインスペクションを拒否するという場合、その物件をあきらめるのが一番リスクを回避できますが、どうしてもあきらめきれない場合には、物件の引き渡しを受けて、売主に契約不適合責任が課せられている期間中にホームインスペクションを行い、契約不適合責任に該当する不具合がみつかったら売主に請求するという方法もあることを覚えておいていただけたらと思います。


瑕疵保険に加入する際にも物件の調査が入るため、今回ご紹介した「ホームインスペクション」と「瑕疵保険」を混同されてしまう方も多いので簡単にそれぞれの特徴をまとめますと、下記のようになります。

<既存住宅瑕疵保険>

(1)瑕疵保険に加入するための物件調査(主要構造部分や雨漏り等)

(2)調査結果に基づく補修

(3)補修が適切になされたかの検査

(4)保険への加入

<ホームインスペクション>

 建物の調査(設備の劣化なども含む)

「ホームインスペクション」は建物の不具合や劣化状況を調べ、売主と買主様の間で事実関係を確認・共有するためのもので、買主様にとっては、将来の維持費用やリフォーム内容を検討する材料とするための検査なんですね。ですので、ホームインスペクションをしたからといって、保証や保険が付くものではなく、瑕疵保険に加入できるかを判定するものではありません。

だったら、瑕疵保険の方が良いのではと思われると思いますが、瑕疵保険加入の為の検査は、主要構造部分や雨水等の侵入を防ぐ部分等に限られ、設備の劣化状況の調査などは含まれません。あくまでも、保険の対象となる部分の調査と言うことです。

すなわち、検査の項目自体は、ホームインスペクションの方が瑕疵保険の検査より多いということです。

建物は瑕疵保険の対象項目以外(例えば、断熱材など)にも問題が多いものです。したがって、瑕疵保険がついている物件に対しても、ホームインスペクションを行い、建物全体の調査を行うというのがお勧めです。


今回は、以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

住まい探しはワクワクと心躍る人生のイベントですが、今回はすこし重たい内容になってしまいました。ただ、現実的に、心躍る人生のイベントが、辛い経験に変わってしまうというケースもありますので、マイホーム購入を決める際には、こういった事も思い出していただけたらと思います。

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