マンション購入時にチェックすべき5つのポイント

今回はマンション購入をお考えの皆さんに、気を付けて頂きたい「一番大事なポイント」をお話します。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●マンション購入で一番大事なポイント

答えを最初にお話すると、それは「共用部」についてです。

一口にマンションと言っても新築・中古、不動産業者が売主・個人が売主と色々ありますが、マンションは戸建と違って、一つの大きな建物に大勢の所有者が共同生活することになるので、様々な面で自分だけ気を付けていても回避できないリスクが隠れている場合があります。

マンションを購入される方はどうしても、そのお部屋(住戸)の間取りや陽当りなどに目が行きがちです。もちろん生活するお部屋のことは大事なのですが、お部屋を大事に使っていても大規模修繕などの建物のメンテナンスや、共用部分の使い方などは同じ建物に住む大勢の所有者と共同で運営していくことになりますので、実は一番気を付けて頂きたいのは「共用部」と言われるマンション全体のことだと思います。

例えばご自分はお部屋や共用部をきれいに使っていたとしても、住んでいる方々が共用廊下に自転車や私物を日常的に置いている(ほとんどのマンションでは管理規約違反となるのですが・・・)など、気持ちよく住めないような問題が起きる事もあります。

特にまだ完成していない新築マンションの場合には、新築というだけで一見安心に思えるのですが、上記のような観点から見ると居住者も修繕計画などの財務関係もゼロからスタートなので、実際に人が住み始めてからどのような問題が起きてくるかわからないという意味では、確認のしようが無いのが現状ですので、そういったリスクが有るのだという事を認識しておいていただけたらと思います。

●マンションの状況を把握するには?

では中古マンションを購入する際にマンションの状況を把握するにはどのような事を確認すればよいか見てみましょう。

確認すべきポイントは、以下の5つです。

(1)重要事項(又は管理)に関する調査報告書

(2)長期修繕計画書

(3)総会の議事録・議案書

(4)共用部の状態

(5)管理人さん

では、それぞれについて何を確認すべきか見ていきましょう。


(1)重要事項(又は管理)に関する調査報告書

管理を管理会社に委託しているマンションでは必ずこの調査報告書を管理会社が発行してくれます。

主に書いてあるのは以下のような内容です。

・管理会社の内容

・管理組合の内容

・修繕積立金がいくら貯まっているか

・マンション全体の借入金の額

・管理費、修繕積立金の額(その住戸のみ)

・管理費、修繕積立金の滞納状況(その住戸及びマンション全体)

・マンション全体の修繕履歴

・駐車場や駐輪場の空き状況

・マンション全体で契約しているインターネットプロバイダ、有線放送、ケーブルテレビ、BS、CSの整備内容

・その他

この重要事項(又は管理)に関する調査報告書は、前述の通り管理会社が発行してくれるもので、各住戸ごとにその時点で最新の情報が記載されたものを発行してくれます。

 といっても、重要な個人情報も記載されている為、誰にでも発行してくれるわけでは無く、その住戸を販売担当している不動産会社や、所有者にだけ発行してくれます。この発行は有料で1通5,000円前後かかりますが、その住戸の詳細を確認する書類なので販売を任されている不動産会社が、費用を負担して取得します。

 この書類を見れば、そのマンションの色々な内容が見えてきます。特に、マンションを長く維持していく為に見逃すことはできない財務状況の確認もある程度できます。

 例えば大規模修繕が〇年後に予定されているとか、修繕積立金が〇月から値上がりする予定になっているとか、修繕積立金があまり貯まっていないので、将来各住戸の負担額が大幅に増えてしまいそうだなとか、管理費・修繕積立金を滞納している人が大勢いるとか、マンション自体が高額の借金を抱えているなんてケースもたまにあります。

真剣に検討したい物件が見つかったら、まずはこの重要事項(又は管理)に関する調査報告書を見せてもらい、ご自分でよく内容を確認しながら、わからない部分については不動産屋さんに説明してもらいましょう。

 

(2)長期修繕計画書

この長期修繕計画は管理を管理会社へ委託しているマンションでも作成していないところが結構あります。

記載されている内容は下記のようなものです。

・新築から数十年間にわたる大規模修繕の予定時期

・その間に貯められる修繕積立金の予想額

・大規模修繕の時に必要と思われる修繕の内容と見込み費用

・見込み工事費用から逆算した修繕積立金の増額計画

などをシミュレーションしたグラフのようなものになっている事がほとんどです。

この長期修繕計画書は、あくまで作成した時点での予想と計画シミュレーションなので、築年数が古くなればなるほど計画書と実際に差異が出来ていることが多いです。

例えば、長期修繕計画書では、築25年以降は修繕積立金がマイナスになるという予測となっているケースが多いのですが、そのなかでも実際にはそうなっていないマンションがほとんどです。

これは、長期修繕計画のシミュレーションをもとに、途中で修繕積立金の額をもう少し増やしたり、計画書に盛り込まれていた修繕の項目であっても、実際の状態を検査して工事不要な部分は次の大規模修繕の時期まで先延ばしするなど、そのマンションの住民で構成される管理組合で財務状況と、マンションの劣化度合いを検討のうえ、微調整を加えたり、長期修繕計画書自体も定期的に内容を更新ながら上手に運営していくというマンションが多いからです。

逆にいうと、管理組合(マンション住民)がしっかりしていないマンションでは、そういった「かじ取り」がうまく出来ずに、いつのまにかマンションを安全に維持する為には借金をしなければならなくなったというケースもあります。

長期修繕計画書が無いマンションはことさら注意が必要と考えたほうが良いです。

 

(3)総会の議事録・議案書

住人で組織された「管理組合」があるマンションでは、法律で必ず年に1度以上、総会を開かなくてはなりません。その際にどのような議題が提起されているのかを記録したものが「議案書」で、実際に行われた総会の内容を記録したものが「議事録」です。この書類にもマンション運営に係る重要な内容が記載されています。

例えば議案書に「昨年浸水した駐車場の修理費用について」とか、「〇月に発生した自転車連続盗難事件に関する対策について」というような、マンション住民でなければわからないようなトラブルが記載されている事もありますし、マンションの財務状況をまとめた帳簿なども載っています。

そして議事録には議案書で提起された内容に対して、管理組合でどのような結論が出たのか?とか、前年度に結論が出た内容について実際にどのような対応をしたのか?ということが記録されています。

数年に渡って先延ばしにされている内容などが隠れていることもあるので、可能であれば過去3期分くらいまで遡って入手できればある程度安心と言えます。

私が在籍していた不動産会社ではこの議案書・議事録を必ず確認したうえで、問題や伝えておいた方が良い内容があれば重要事項説明書にその内容を盛り込んで買主様にご説明していましたが、宅建業法では義務化されていないので、議案書・議事録を入手できないと言って確認せずに契約する不動産会社もあります。

この議案書・議事録は管理会社から総会の前後に管理組合員(所有者)全員へ郵送されてきますが、所有者が紛失したり、捨ててしまっているケースも良くあります。

そこであきらめてしまわずに、管理会社によっては上記の重要事項(管理)に関する調査報告書などを請求する際に発行してくれる場合もあったり、管理人室に保管してあって、そこで見せてもらえる場合もありますので、真剣に検討したい物件がみつかった際には、その物件の議案書・議事録をできれば3期分入手して、内容を確認するようにしてみましょう。

 

(4)共用部の状態

実際にマンションに見学に行った際は、なるべく時間をかけてエントランスやごみ置き場、自転車置き場、駐車場、トランクルームなどの共用部を散策してみましょう。

なるべく時間をかけてとお話した理由は、共用部をじっくり散策していると住人の方と遭遇する機会も増えます。何人か住人に会うと、「皆さん挨拶を交わしてとても気持ちよく住めそうだな」とか、逆に「ギスギスした空気感」を感じる事もあったりと、そのマンションの様子を肌で感じる事ができます。

また、それぞれの共用部を見る事で、とても清潔感があるとか、逆に自転車や植木鉢などいろいろなものが共用廊下に置いてあるなど、住人の意識が低い印象などを感じ取ることができます。

それからエントランスに掲示物などがある場合には、マナーが悪い住人への注意書きなどが張り出されていることなどもあるので、どんな事が書かれているのかも意識して見てみましょう。


(5)管理人さん

最後に、「マンションの事を一番よく知っているのは不動産屋さんではなく管理人さん」ということも覚えておきましょう。

管理人さんには本当にいろいろなタイプの方がいます。「入居時には良い人が管理人さんだったけれど、こんどの人はちょっと対応が悪い」とかその逆もありますが、管理人さんがどんな人か?というのは意外と大事なので、軽い会話などで言葉を交わしてみると良いと思います。

厳密に言うと管理人さんには「守秘義務」というのがあり、部外者にマンション内のことをペラペラと話してはいけないことになっていますが、たいていの場合、こちらの質問には答えてくれます。

 真剣に検討したいけれど、自分の質問に対して担当の不動産屋さんが把握していない場合、住人である売主さんに聞くという他に、管理人さんに聞いてみるという手段があることも覚えておくと良いと思います。

ただし、管理人さんが24時間常駐しているマンションを除いては、管理人さんがいる曜日や時間帯もマンションによって異なります。

最初にご紹介した重要事項(管理)に関する調査報告書には、管理人さんの勤務時間帯や、管理人室の電話番号なども記載されている場合がありますので、どうしても自分で直接聞いてみたい事がある場合には、ダメもとで聞いてみるというのも良いかもしれません。


という事で、今回はマンションの「共用部」にスポットを当ててお話してみましたがいかがでしたでしょうか?

完成前の新築マンションや、まだ入居者のいない新築マンションでは確認しようのない内容ですが、豪華さやスケール感を演出してくれるマンションの「共用部」は、お住まいになるうえでとても大事な要素になりますので、見学の際や、検討される際には是非注意を払って、後悔のない住まいに巡り会って頂けたらと思います。

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