生前贈与の活用について考える

皆さんは「生前贈与」と聞くと、どんなことを思い浮かべられるでしょうか?

その名の通り、生きていらっしゃるうちに財産を贈与するということなのですが、相続税を軽減するだけでなく、色々なメリットがありますので、ポイントをしっかり押さえておきましょう。

【コラムニスト】

 ファイナンシャルプランナー 三井明子

●生前贈与のメリット

亡くなった時に相続によって、ご家族へ財産を譲るということもできますが、生きている間に贈与することで、次のようなメリットがあります。

<贈与する人にとってのメリット>

(1)ご家族の喜ぶ顔が見られる

(2)ご自分の意思で「いつ・誰に・いくら」贈与するのか決められる

(3)相続税を負担を軽減できる可能性あり

まず、贈与する人にとっては、生きている間にご家族にお金を渡すので、喜んでいる顔を見ることができるのは嬉しいですよね。また、ご自分の死後、本当に思った通りに渡したい人にへお金が渡るのか不安だという方も多いですが、生前贈与の場合はそういった心配もありません。さらに、贈与によって相続財産が減っていくと、相続時にかかる相続税の負担が軽くなる可能性もあるのです。


<贈与を受ける人(子・孫など)にとってのメリット>

(1)生活費や教育費、住宅購入などに活用できる(使途自由)

(2)毎年、基礎控除110万円の範囲内であれば贈与税がかからない

贈与を受ける人にとっても、若い時ほどお金が必要なこともあり、住宅購入やお子様の教育費、生活費など、使い道が自由なお金として早めにもらえたら嬉しいですよね。また、年間110万円までは贈与税の基礎控除があり、贈与税もかかりません。

●生前贈与で気を付けるべきこと

色々なメリットがある一方で、生前贈与には気を付けるべきポイントもあります。

当然のことながら、一度贈与したお金はお相手のものとなり、返してもらうことはできませんので、これからのご自身の生活や住宅のリフォーム、介護費用などに充てるお金を余裕を持って残したうえで贈与を行ってください。経済的には長生きもリスクとなりますので、しっかりとセカンドライフプランを立てたうえで、余剰資金を贈与しましょう。

また、贈与には毎年110万円の基礎控除があるからと、「1,000万円を毎年100万円ずつ贈与する」という約束のもとに行われる贈与は「定期贈与」と言われ、この場合は約束をした年に「10年間に渡って100万円ずつ受け取る権利」に対して贈与税がかかります。

さらに、贈与の基礎控除の範囲内であっても、相続開始(亡くなる)3年以内の贈与については、相続税の課税対象となります。相続税の軽減を目的として生前贈与をする場合は、早めに始めたり、より多くの人に贈与することを検討しましょう。贈与税の基礎控除110万円は、贈与する側ではなく、贈与を受ける人が活用するものなので、3人に110万円ずつ贈与すれば、330万円を非課税で贈与できることになります。

また、生前贈与をしているつもりでも、贈与と認められない場合があるので、下記のポイントを押さえて正しく贈与しましょう。

●贈与税と相続税、どちらの負担が軽い?

相続税の軽減のために生前贈与を考えている方にとっては、贈与税を少し払ったとしてもなるべく早く多くの生前贈与を行いたいと思われる方もいらっしゃると思います。

その時に気になるのが、贈与税を払うのと相続税を払うのでは、どちらが負担が軽いのか?ということだと思います。

下表を見ていただくとお分かりの通り、一度に多額のお金を贈与すると、贈与税の負担が重くなり、相続時に相続税を払った方が税負担が軽いという場合があります。

まずは、相続財産がいくらになりそうかを計算し、相続税の負担率を確認して、それよりも贈与税の負担率が少ない範囲で生前贈与を行うというのが一般的です。

「相続財産がいくらか」ということは財産目録を作ったり、不動産の査定価格などを調べたうえで、税理士に相談して計算してもらうと良いと思います。相続相談の経験が多い税理士さんであれば、クライアントのご年齢やご健康状態、相続人の数や年齢構成などを総合的に判断したうえで、どのくらいのペースで生前贈与を進めていくべきか提案してくれるでしょう。

●先延ばしにするほど相続はタイヘン

以前のコラムでもお話ししましたが、生前贈与を含む相続対策は、早め早めに行うことが大事です。早く準備してスタートすれば取れる選択肢も増えますし、少しずつ生前贈与できるので、贈与税の基礎控除をフル活用できます。

ご自身が元気でまだ早いかな、と思うくらいの時が始め時かもしれません。少なくとも、「相続財産がどのくらいになりそうか?」ということと、「これから先にかかるお金がいくらくらいか?」ということはライフプラン設計を通してしっかり把握しておきましょう。

また、あまりに早く生前贈与すると、子どもや孫がムダづかいしないか心配だなぁという方は、生前贈与したお金の使い道を一緒に考えたり、お子様にもライフプラン設計の大切さをお伝えするために、ファイナンシャルプランナーをご紹介いただくケースも多いです。お子様やお孫様が将来困らないように、お金についてしっかり考える機会を作ってあげることが、実は一番のプレゼントになるかもしれませんね。


さて、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

大切な資産をご家族へ「つなぐ」とともに、有効に活用してもらえるように最適なプランを一緒に考えましょう。

次の講義へ